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研究者コラム 高根信吾(常葉大学)

      

高根 信吾(常葉大学 経営学部経営学科 准教授

誰に言われたかではなく、何を言われたかを

 人は他人からの指摘によって感情が動かされる。努力していることを認められ、褒められれば嬉しいし、逆に、欠点などを注意されれば、誰でも頭にくるし、ウザイと感じ、「お前だけには言われたくない」と思い、時に、逆切れしたりするだろう。人間なのだから感情が動くのは仕方ない。と同時に、正しいことを指摘されたのなら、「痛いところを突かれた」「直さないといけない」とも思う。この反省というのは、知的な反応である。さらに身体的な反応もあるだろう。例えば、思わずにやけてしまったり、顔を赤らめたり、冷や汗をかいたり、胃が痛くなったり。このように、人は他人からの指摘によって心も頭も身体も動かされる。
 ネガティブな指摘を受けた時、素直ではない私は、そういう場面で、その人に対して「すみません」と謝ることが苦手で、出来ないことの方が多い。もし、その人が私のことを思って指摘してくれたのならば、感謝しなければならないはずなのに…。また、教員・指導者としての私は、学生・選手に対してそういった指摘するということが多い。そして、私以上に素直でない(?)最近の学生・選手は、露骨に嫌な顔をすることがある。でも、そこは許そうと思っている。つまり、本当に許せないのは、私の指摘を聞き流し、その後の言動を改めようとしないことである。

 そういったネガティブな指摘は、上司・先輩からだけでなく、仲間や後輩から受けるということもある。仲間や後輩から受ける指摘は、命令的な意味合いが薄く、受け流されやすいが、大切なことは、「誰に言われたか」ではなく「何を言われたか」であり、「発信源」ではなく「発信された内容」である。ネガティブな指摘を「人間関係悪化の種」とするか、それとも「成長のきっかけ」とするかは本人の心掛け次第であり、その結果には大きな違いがある。やはり、大切なのは同じ事を指摘されないように言動を改めることであろう。
 話は変わるが、この4月から14年ぶりに大学院生(愛知教育大学大学院・静岡大学大学院教育学研究科後期3年博士課程共同教科開発学専攻所属)になった。私にとって3つ目の、この大学院は平成24年4月に設置された共同大学院である。専攻名称である『教科開発学』とは、「教科専門・教科教育・教職専門の枠を超えて、子どもたちを取り巻く環境を視野に入れ、教科との関わりの中で学校教育が抱える複雑・多様化した諸課題に対応した研究を遂行していくため、教科専門と教科教育を融合・発展させた『教科学』と、教職専門を発展させた『教育環境学』とをあわせて体系化することを目指す新たな学問領域」であり、私の場合、バレーボールという教材(教科専門)に着目して、授業方法や実践とその評価(教科教育)を融合させ、教科内容構成の研究を進めることを計画している。その際、現在の教育環境に適合し、学校教育が抱える諸課題に対応した教科内容構成を研究していくことになる。3年間という限られた期間で、どこまで明らかにできるのか、不安ばかりであるが、さしあたり「バレーボールとは何であるか」について考察を進めたいと思っている。バレーボールはどのようなスポーツなのか、バレーボールの特徴は何であるかという問いである。それに対する答えのひとつは「定義」によって導くことが可能である。定義とは、「AとはBである」という形式を用いた、本質を表す命題である。その際、Bの部分には、最近類(対象を種として含む類)と種差(対象を他の種から区別する特徴)が含まれる。一般に、定義をする上で必要な要素は「類と種差」といわれるが、定義を日本語で表す場合には、種差→類という順になる。例えば、椅子の定義は、「椅子とは座るため(種差)の家具(類)である」となる。バレーボールの定義の場合、 類は「スポーツ」や「球技」などを用いることが多く、種差にはテニスやバスケットボールとは異なる、「バレーボールの独自の特徴」が入ることになる。そして、この考察において重要なポイントは、バレーボールとは、目に見える現象ではなく、それを生起させるシステムであるという視点を持つことである。現象場面を観察するだけでは、決して本質にはたどり着けない。そして、身体運動文化としてのバレーボールの考察の後には、教材(文化材)としてのバレーボールに着目し、実際のバレーボールの授業では受講生に何を身に付けさせるのかについて考察したい。

 昨年の夏から秋にかけては、久しぶりに受験勉強をし、合格発表をドキドキしながら待った。しかしながら、新型コロナウイルスの影響で入学式は中止、授業開始も延期…。何とも不安なスタートである。幸いなことに、指導教員である新保淳先生には学部生時代からずっとお世話になっており、静岡大学キャンパスには学部生として4年間通学しただけではなく、非常勤講師として13年間勤務しており、アウェイ感は無い。が、学生になった実感もほぼ無い。学生証すら手元に無い。
 この3年間はこれまでと違なる環境で研究活動を進められることとなった。与えられた環境の中で、様々なところから得られるであろう、鋭く、厳しい指摘に対して、適切に応えられるよう日々精進したい。

takane○sz.tokoha-u.ac.jp(○は@)

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