会長挨拶

身体運動文化学会 会長
前林 清和

 身体運動文化という言葉は、私が筑波大学大学院武道論研究室で学んでいた頃、恩師の中林信二先生がゼミナールのなかで言われた言葉です。その言葉は、今までに聞いたことがない言葉で、武道やスポーツ、舞踊、祭りなど様々な身体運動を文化として包括して捉える概念であり、当時の私は新しいパラダイムの予感がして、わくわくした記憶があります。その後、神戸学院大学に移り、まず二杉茂先生とともに1994年に「身体運動文化研究会」を立ち上げた後、1996年に高橋進先生を会長に本学会「身体運動文化学会」を設立したのです。当時は、阪神・淡路大震災の直後であり、特に神戸は混乱を極めていましたが、学問研究はなんとしても続けなければいけないという二杉先生の強い意志に導かれて、多くの方々の協力を得て学会設立に漕ぎつけました。それ以降、多くの研究者が集い、研鑽を重ね、今に至りますが、それも会員の皆様のご尽力の賜物だと感謝しています。
これらの積み重ねを前提に、これからはさらに学会のレベルを質量ともに高めていきたいと思っています。
 ところで、身体運動文化の対象はスポーツ、武道、舞踊、祭りなどでありますが、その研究方法は、いわゆる学際研究です。この学際研究は大きく分けて2つあるといわれています。一つは「異分野連携」であり、もう一つは「異分野融合」といわれるものです。しかし、ほとんどの学際研究といわれるものは「異分野連携」どまりであり、しかも1つの対象をいくつかの分野で考察して並べるというレベルで止まっており、課題解決にまで至っていないのが現状です。「異分野連携」「異分野融合」を進めていくには、まず研究者一人一人が自身のなかで学際的な視野と複数の学問分野の知識をある程度を持ち、自分の頭のなかで異分野連携、異分野融合ができなければ、グループやプロジェクトチームでの本当の意味の学際的な研究はできないと思います。つまり、中核となる専門分野を持ちながら、他の複数の専門性を持ち合わせることが必要なのです。それを実現できるような研究の場、討論の場をできるだけ設けていきたいと思います。
 真の学際研究を進めるべく、役員および事務局の皆様と共に本学会のさらなる発展に尽くしますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

 

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